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「夫婦漫談 vol.1」 〜地域を巻き込みながら赤ちゃんと進む合田家〜【トークイベント開催レポート】 ゲスト 合田昌宏さん、合田三奈子さん

「夫婦漫談」第一弾のゲストは、新長田の六間道商店街のレンタルスペース「r3」の運営を手がけながら、それぞれの仕事も手がける合田夫妻。子ども4人の6人家族は、頼まれると断れない性格だという夫の昌宏さん、笑顔と勢いでいろんな人をいろんなことに巻き込む性格の妻の美奈子さん。長男のショウヘイくん(中1)・優しい性格の卓球少年、運動神経抜群の長女のナオちゃん(小4)・家族で一番強いという次女、カオちゃん(5才?)・ご近所の人たちのアイドル、次男のシュウヘイくん(1歳半)。現在は、ご自宅である新長田の小さな文化住宅をシェアハウスにして、母キーナさんと娘ジュリアーノさん親子も一緒に暮らしています。

 

夫=“創る人”、妻=“繋ぐ人”

—それぞれの自己紹介をお願いします。

昌宏 空間設計や施工を手がけていて、名刺の肩書きは「創る人」。若くみられますが、44歳になりました。神戸出身で、小学校4年生から社会人5年目までサッカーに明け暮れていました。神戸の大学で建築を学んでいる時に、阪神・淡路大震災が起きて、ボランティアで災害調査を担当したのが今暮らしているJR新長田の南地区だったんです。大学を卒業してからは、工務店で5年間設計を担当した後、大学の友人と設計ユニット『BGM』を立ち上げました。当時は頭文字を並べてユニット作るのが流行っていて、僕もやっちゃったんですね。同級生3人(ビワ、ゴウダ、マツモト)の頭文字をとって『BGM』。でも、設計とは名ばかりで、下請けと日雇い労働の仕事が9割、実際の設計業務なんて1割もなかったと思います。それから30歳の時に結婚して、ご縁があって、この町に住むことになりました。それからしばらくして、リノベーションの先駆者である大阪の設計事務所『アートアンドクラフト』に拾ってもらって、今もプランナーとして在籍しています。個人でもいろんなモノ作りを手がけていて、これまで200くらいの案件を手がけてきました。2014年から、妻とともに「r3」の管理人をやっております。

美奈子 私は“繋ぐ人”と言われています。幼少期は人見知りで甘えん坊で、人と繋がるのがすごく嫌だったんですけど、人と繋がる→嫌になる→人と繋がるっていうルーティーンを繰り返しているうちに、結局好きになってしまって。今、38歳です。あだ名は“なっち”。小学校2年生から19歳までバレーボール一本で生きてきて、実業団のチームに1年半くらい所属していたのですが、その会社で働くイメージがぜんぜん湧かなくて退職。そのあとは、小さい時から服が好きだったのでアパレル関係の販売員に。でも、バレーボールだけで進学して、就職してきたので、就職の仕方が全くわからなくて。とりあえず履歴書を持って知っているお店を20軒くらい巡り歩いて、どこもかしこも落ちて、最後に行った店でようやく雇ってもらって、最終的には店長までやらせてもらいました。23歳くらいの時になんだか物足りなくなって、服屋さんの仕事が終わってから北野のバーでバイトをはじめて。お酒の振れないバーテンダーとして働いていました。そのバーが、以前から知り合いだった昌宏さん設計だったんです。それから24歳で結婚して、25歳で一人目を出産。専業主婦に向いてないと気づき始めて、27歳の時に子連れでフィットネスのインストラクターになりました。3人目が生まれた32歳の時に、現在NPOの理事を務めている『赤ちゃん先生プロジェクト』に出会いました。

「r3」は、家庭の日常を豊かにするリビングのような場所

—お二人ともめまぐるしい経歴をお持ちですね。ちなみに、「r3」は、どういった活動をしているんですか?

昌宏 六間道五丁目にあった、『Winaの森』というスペースを作ったことに始まります。ママや親子向けのカフェやワークショップを手がけていたんです。

美奈子 子どもができた頃、『Winaの森』ができる前にあった『NPO法人ウィズネイチャー』という子育て支援の空間に通い始めたのがきっかけで。オーナーさんと仲良くなって、それから7年くらい運営されていたんだけど、「ちょっと運営がしんどくなってきたから、ここで何かしてみない?」と声をかけてもらって。週1だけワークショップを兼ねた活動からスタートして、「r3」につながっていきます。

昌宏 僕たちが引っ越してきた頃は、予想以上に人がいないし、商店街を歩いている人が少なくて。でも、何かをしかけたら人が集まってくることに気づいたんです。それで、神戸市の商店街活性化プロジェクトを使って3つくらいの空き店舗の運営をはじめました。2014年にオープンした「r3」は、主にキッチン、健康、寺子屋、イベント会場としてのレンタルスペースの機能のほか、オフィスとしても使っていまして、僕や妻の事務所であったり、べこっこMaMaいう東北のママさんの団体の本拠地にもなっています。『Winaの森』は子どもたちの通う小学校の校区外にあったんですが、「r3」は校区内にあるから、子どもたちはもちろん、お母さんの帰りが遅い友だちを連れて直接ここに帰ってくる。家族の日常をより豊かにしてくれる、我が家のリビングのような場所ですね。

—お二人にとっても、新長田の人にとっても、拠点になりつつあるのでは?

昌宏 基本的には、僕たち夫婦が会いたいと思う人をお呼びしています。あとは、先生をここに呼んで、子どもたちの習い事の場にしたり。自然と、似た世代の人たちや他業種の交流の場になってきましたね。結果的に、僕らがいろんなことをやっていたら、人と人をつなぐ場所になっているかな、と。これからは、長田に住みたい人やお店を開きたい人のお手伝いもしていこうかなと思っています。今ちょっと考えているのは、下町を案内する“下町ツアー”。あと、六間道商店街の今昔を伝える“六間ラジオ”というのを企画しています。よき時代のことを伝え続けなあかんなぁ、と。

ママになってみえた、新しい仕事観と生活観

—夫婦で一緒に活動していることがたくさんありますが、役割分担はどういう風に決めているんですか?

美奈子 決めてたっけ?

—決めてないんですか!?

昌宏 やれる人が、やれる時にやる。

—今、なっちさんは『NPO法人ママの働き方応援隊』の代表としても活躍されていますよね。

美奈子 6年前に『赤ちゃん先生』という事業がスタートして。女性は、妊娠・出産をしたら仕事を中断しますよね。日本の6割くらいの女性が、そういう状態になっていて。だからと言って、子どもを預けて働きたいかというとみんながそうではなくて。だったら、「子どもと一緒にできる働き方を作ろう」と0歳から3歳の子どもを子育て中のお母さんが小・中学校や高校、大学に行って赤ちゃんが先生になって授業をする仕事ができたんです。私も、はじめはその一員の“赤ちゃん先生”として参加し、今年から代表理事を務めています。

—美奈子さんのお話を聞いていると、ママになったことで人生が大きく変わってるような気がします。

美奈子 そうですね、若い頃は24時間365日というと言い過ぎかもしれませんが、寝食を忘れて好きな仕事だけをできるタイプだったんです。でも、結婚して子どもができてから、三度の食事とか規則正しい時間に寝て起きるという、人間らしい生活に戻って。生活が整うと、仕事も全然違う世界になったような気がします。

夫はフリーランスだけど、パートタイム型の働き方を実践中

—「r3」もNPOの代表も、場とか繋がりをつくることに重きを置いているように感じます。食べていくためには必要なお金については、どんな風に考えておられるのかなぁと。

美奈子 あの、あんまり儲けようとかいう頭がなくて。お金のことで困ったことがないんですよ。ご飯は普通に食べられるし、生活するために働くっていう感覚がないのかもしれない。

—それは、昌宏さんも一緒ですか?

昌宏 あるかもしれないですね。それは。

美奈子 なんとかなる!みたいな。

昌宏 今のところ、なんとかなってるしね。

—ところで昌宏さんは、どのような働き方をしているんでしょうか?

昌宏:フリーランスでの活動がメインです。アートアンドクラフトでも、週一くらいのペースで仕事をしています。いい会社なので、いろんな経験を積ませてもらった結果、自分の好きなことやデザインが見えてきたというか。実は、ここ(ヨンバンカンニカイ)も僕がデザインしたんです。中央にどんと木を植えたり、こういうざっくりした感じが大好きなんです。そういう、個人的に好きなスタイルをいろんな現場で手がけさせてもらっています。

—昌宏さんも飛び回っていそうだし、美奈子さんはNPOの代表でお忙しそう。昌宏さんの家事分担が増えているとも聞きましたが。

昌宏 そうなんですよ。僕、“主夫”に憧れがあって。あんまり言うてないんですけど。だから、働き方は10時〜15時のパートタイム。いかに効率よく仕事をこなすかということにチャレンジをしている真っ最中なんです。仕事の量は、これまでと比べるともちろん減りますが、その中で収入を減らさず、どう生きていくのかという挑戦。

—その分、美奈子さんは仕事量が増えているですか?

美奈子 そんなこともないです。できるだけ減らすようにしています。どこにでも自由に行けるようにしておきたいので。

—昌宏さんは、パートタイム型を実践してみてどうですか?

昌宏 今のとこ、まぁまぁかな。たまに夜中とか朝めっちゃ早く出ていかなあかんとかいろいろあるんですけど、「こんなスタイルで仕事をします」とお客さんにも伝えてあるから、理解してくれる人からしか依頼がないんですよ。だから、はじめから無理をしなくていい。

関わりたい人は、自然と向こうからやってくる

—今日のタイトルに、“地域を巻き込む”とありますが、町や地域の人たちとはどのような交流があるのでしょうか?

昌宏 僕らが家を探してもらって、長田に住む条件として提示されたのが、町のいろんな役を任務として受けることだったんです。ここ、重要なポイントで。引っ越してきていきなり任命されたのが、民生主任児童委員。あとは、息子と娘の通うPTA会長と、その当時164校の代表会長。なんやねんそのポジションっていう(笑)。そんな風に、僕の場合は巻き込んでいるというよりは、巻き込まれちゃった方で。その流れのまま今、身を任せている感じです。

美奈子 赤ちゃんを連れて歩いていたら、まず「お子さん、いくつなん?」と会話が始まり、「どこに住んでるの?」「なんでこの町きたん?」とか声をかけられることが多いですね。それをきっかけに地域の人と話すようになることもあります。でも、地域を巻き込むと言っても、実際はみんなを巻き込めるわけではありませんよね。いろんな価値観の人がいるから、「何をしているのかよくわからない」と言われることもあります。だから、関わりたい人は、向こうから来るものかなと思っています。

—これは、美奈子さんへの個人的な質問です。出産に伴い、仕事が減るんじゃないかという不安を抱えている人もけっこういる中で、お母さん、NPOの代表、「r3」の管理人で、そして妻であり母である。この現実に「うわぁー」となることないんですか?

美奈子 うわぁーってなる。うーん、なってる?

昌宏 なってへんよ。

美奈子 昔はいろいろ抱えてたんですけど、今は抱えなくなりましたね。あんまり気にしないようにしています。それに、私は子どもができてから仕事が増えました。ママに関することもだし、全然違うことも。

—ずっと一緒にいてけんかとかしないんですか?

昌宏 基本的に、僕自身がけんかが嫌いなのと、絶対に負ける自信があって。多分、付き合っている時から14年間、けんかしたことないんじゃないかな。

美奈子 私はけんかになるやすい気性だから、けんかにならない人を選んだっていうのは大前提にあります。

けんかはしないはずだけど…

—では、会場からの質問のある方、どうぞ。

参加者 お二人ともいつも忙しくされていますが、ご夫婦だけでデートをすることはあるんでしょうか?

昌宏 たまにランチに行く程度かな。

美奈子 それも、20分くらい。2人なっても、あんまり話すことがないんですよね。スケジュールの打ち合わせをするくらい。

昌宏 我が家は、月に1回か2回、「ちょっと時間ある?」と妻に急に呼ばれてスケジュールを確認されるんです。基本的には、僕が聞いて、妻のスケジュールの隙間に僕の予定を入れるっていう。それはかなり頭を使います。

—シフトを組むイメージですね。

昌宏 そうそう。「r3」のスケジュールや子どもの行事予定も考慮して、妻はフルタイムで、僕のパートタイムのシフトを組む感じ。やっぱり隙間ですね。

参加者 僕は今日、妻とケンカをしたのですが、最近ぶつかったことはありますか?

美奈子 夫があんまり言葉を発しないから、「どう思ってるん?」とか言っちゃうことはありますね。若い頃やんちゃしていたのを知っているから、スケジュールをあわせてるとか、パートタイムとか、ちょっときれいごとに聞こえる時もありますし。

会場 笑い。

昌宏 では、そろそろおひらきにしましょうか。

この後も、議論(?)はしばらく続き、昌宏さんがしゅんとする場面もありました。「夫婦げんかはしない」といったそばから、この調子。けれど、夫婦というもの、こういう時間もあって2人しか得られない関係や、ほどよいバランスをつくっていくもの、なのかもしれません。

(取材・文 山森彩